- 研修医 × 専攻医/上級医 キャリア対談シリーズ Vol.4【放射線科編】-
「放射線科は、画像を見続ける診療科?」
医学生の中には、そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし、画像の向こうには患者さんがいて、その診断や治療を待つ臨床医がいます。放射線科は、画像診断と画像下治療を通じて、病院全体の診療を支える診療科です。
今回は、学生時代から放射線科を志してきた専攻医と、出版社での社会人経験を経て初期研修を始め、研修中に放射線診断科への進路を決めた研修医にお話を伺いました。
最初から進路が決まっていた人と、実際に働く中で自分に合う道を見つけた人。異なる二人の言葉から、放射線科の仕事と、関東労災病院での研修のリアルをお届けします。

「社会人として積み重ねた経験も、今の自分の強みになっています」
司会者: 今回は放射線科から、研修医と専攻医のお二人にお話を伺います。まずは自己紹介をお願いします。
研修医N: 関東労災病院の初期研修医2年目のNです。医学部を卒業した後は、出版社で編集の仕事をしていました。その後、当院で臨床研修を始め、現在は放射線診断科に進むことを決めています。
専攻医Y: 放射線科専攻医3年目です。大学卒業後に上京し初期研修を行い、東京大学の放射線科に入局しました。現在は関東労災病院で専門研修を行っています。当院には1年半在籍する予定で、現在着任してから約1年が経ったところです。
司会者: 研修医N先生は、医学部卒業後すぐに研修を始めず、社会人として働かれたのですね。
研修医N: 学生時代から、卒業してすぐに医師になるよりも、まず自分がやりたいことを経験してから納得して医師として働きたいという気持ちがありました。バンド活動や、出版社で社員として7年間勤務した経験があります。出版社では、医療に関する編集の仕事をしていました。原稿を読み、必要な情報を整理して、読者に伝わる形にしていく仕事です。とても充実していましたが、社会人として経験を積む中で、改めて「医師として臨床に向き合おう」と決めました。
司会者: 関東労災病院を研修先として選んだ理由を教えてください。
研修医N: 病院のホームページや動画を見たときに、研修医同士や先生方の雰囲気が良いと感じたことがきっかけです。さらに幅広い診療科があり、実際にさまざまな科を経験しながら、自分の進路を考えられることにも魅力を感じました。実際に入職してみると、同期の研修医にも上級医の先生方にも相談しやすく、安心して研修に取り組めています。
司会者: 研修医N先生は2年目チームの「良いお兄さん役」として場を和ませてくれて、本当に助かっています。
「自分に合う診療科は、実際にそこで働く自分を想像できたときに見つかりました」
司会者: お二人は、それぞれどのように放射線科を選ばれたのでしょうか。
専攻医Y: 私は学生時代の放射線科での臨床実習の際、「画像所見を見つけるまで帰れません」という実習があり、みんなが大変に感じている中で私だけとても楽しかったんです。「人によっては大変に感じることを、自分は楽しいと思える」。それに気づいて、放射線科は自分に向いているかもしれないと思いました。初期研修中も放射線科を長めに選択し、進路は大きく変わりませんでした。
司会者: 研修医N先生は、最初から放射線科を考えていたのですか。
研修医N: 全く考えていませんでした。最初は漠然と内科を考えていました。ですが、いろいろな診療科で研修する中で、自分は複数の仕事を同時に進めるより、一つの課題に向き合い、情報を整理しながらじっくり考える方が合っていると感じるようになりました。読影を身につけたいと思い放射線科の研修を選択したところ、先生方がとても楽しそうに仕事をしていました。一つの画像に向き合い、所見を探し、考えた内容をレポートとしてまとめる。その仕事の進め方にあまり違和感がなかったんです。今振り返ると、出版社での情報を整理して言葉にする編集の仕事は、画像を読み、所見をレポートにまとめる放射線診断と通じる部分があったと思います。
司会者: 仕事の内容だけでなく、働き方や考え方もご自身に合っていたのですね。診療科を決めるうえで迷ったことや、決め手となった出来事はありましたか?
研修医N: 東京大学放射線科医局を見学した際には、社会人経験を経て医師になられた上級医の先生と話す機会があり、社会人経験や編集の仕事で培った力も、放射線診断科で生かせると言っていただきました。自分では少し特殊だと思っていた経歴を、「それも強みになる」と受け止めてもらえたことで、「放射線科で頑張ってみよう」と決めることができました。
「診療科を身近に感じられたのは、そこで働く先生が話しやすかったことも大きいです」
司会者: 放射線科のローテーションがお二人の最初の出会いだったのですね。第一印象はいかがでしたか。
専攻医Y: とても話しやすい研修医だと思いました。日々の業務にも真面目に向き合い、自分で調べた上で質問してくれていました。安心して一緒に仕事ができる研修医という印象でした。放射線科医には画像を読む力だけでなく、他科の先生が相談しやすい雰囲気も必要です。研修医N先生の話しやすさは、将来、放射線科医としても大きな長所になると思います。
研修医N: 専攻医Y先生は物腰が柔らかく、質問や相談をしやすい先生でした。答えだけを教えるのではなく、「どこを見て、どのように考えるのか」を一緒に整理してくださいました。こちらから質問するだけでなく、先生の方から声を掛けてくださることも多かったです。放射線科には、画面に向かって一人で黙々と仕事をするイメージがありました。でも実際には、他科の医師や放射線技師、看護師と関わりながら、病院全体の診療を支える仕事でした。専攻医Y先生との出会いで、放射線科が自分にとって一気に身近な進路になりました。
「一症例を丁寧に読むと、次の画像が少し違って見えるようになります」
司会者: 放射線科をローテーションした研修医は、どのような研修を行いますか。
研修医N: 研修の中心は読影です。最初は胸部や腹部のCTを中心に、教科書を参照しながら自分で画像を読み、所見をレポートにまとめます。その後、上級医の先生に確認していただき、見落としていた所見や考え方についてフィードバックを受けます。興味のある臓器や、将来進みたい診療科があれば、それに関連した症例を選ぶこともできます。基本を学びながら、自分の関心に応じて経験を広げられる研修でした。
司会者: 最初から多くの症例を読影できるものなのでしょうか。
研修医N: 最初は一症例を読影するのにも時間がかかりました。調べながら読んでいると、さらに分からないことが出てきます。難しい症例を選んだ日は、一症例だけで一日が終わることもありました。ただ、一つの症例に丁寧に向き合うと、次に似た画像を見たときに「あのとき調べた所見かもしれない」と気づけます。昨日まで見えなかったものが、少しずつ見えるようになる。その感覚が面白かったです。
専攻医Y: 一日数件が目安になりますが、症例によって難易度は違います。件数だけを増やすのではなく、自分で考えた上で上級医の確認を受けることが大切です。知識を学び、画像を見て、また教科書で学ぶ。その繰り返しで少しずつ読影力が身についていきます。
「任せてもらえるけれど、放っておかれない。そのバランスが当院の魅力です」
司会者: 読影以外には、どのようなことを経験できますか。
研修医N: 造影検査に関わる業務のほか、機会があればPICC挿入やCTガイド下生検、IVRなどを見学・経験できます。私が1回目の研修では、PICC挿入を数例経験しました。もう1回放射線科を選択する予定なので、さらに手技を経験したいと思っています。
司会者: 当院放射線科では、どのような手技を行っていますか。
専攻医Y: PICC挿入やCVポート造設、CTガイド下生検のほか、血管造影を用いたIVRも行っています。消化管出血や喀血などに対する塞栓術をはじめ、全身のさまざまな病態を経験できます。画像を読むだけではなく、画像を使って診断し、時にはそのまま治療につなげることも放射線科の仕事です。当院は、若手にも実際に手技を担当する機会があります。
司会者: 若手にも積極的に経験させてもらえるのですね。
専攻医Y: はい。ただ任せるだけではなく、上級医が近くで見ながら直接指導してくれます。研修医や専攻医にとって大切なのは、自由に経験することだけではありません。適切な指導のもとで、自分で考え、実際に経験することだと思います。当院は、そのバランスがとてもよいと感じています。私自身、手技を経験できることと指導環境の良さに魅力を感じ、当初の予定より研修期間を延長しました。
「診断を軸に、将来の選択肢を広げていく」
司会者: 研修医N先生は、放射線科に進んだ後のキャリアをどのように考えていますか。
研修医N: まずは放射線診断を中心に学び、自分で責任を持って画像を読める医師になることが目標です。IVRをどの程度専門にするか、大学院に進むかなどは、実際に経験を積みながら考えたいと思っています。最初からすべてを決めるのではなく、専門研修を通じて自分に合う分野を見つけたいです。放射線科は、病院で診断やIVRに携わるほか、画像診断を専門とする施設や遠隔読影など、専門性を生かしたさまざまな働き方があります。将来、自分や家族の生活が変化したときにも、働き方の選択肢を持てることは魅力だと感じています。
司会者: 専攻医Y先生は、どのようなキャリアを考えていますか。
専攻医Y: まずは幅広い画像診断の力を身につけ、専門医を取得することが目標です。IVRにも関心があるので、診断と手技の両方を経験しながら、自分の専門性を深めたいと思っています。これまで多くの先生方から教えていただいたので、将来は自分の技術を高めるだけでなく、後輩に還元することも大切にしたいです。
「仕事の後も、自分の時間を持てる」
司会者: 関東労災病院での研修と私生活のバランスはいかがですか。
研修医N: とてもバランスを取りやすいと思います。勤務中は、何をすればよいかわからないまま時間が過ぎることはなく、各科の上級医に相談しながらしっかり研修できます。わからないことがあれば、気軽に相談できる先生が多いことも安心です。一方で、業務が終わった後は自分の時間を持つことができます。帰宅して料理をしたり、映画を観たり、楽器を演奏したりしています。
司会者: 現在もバンド活動を続けているのですね。
研修医N: はい。学生時代ほど頻繁ではありませんが、今もライブに出演しています。音楽は自分にとって大切なものです。医師として学びながら、好きなことも続けられているので、研修と生活のメリハリをつけやすいと思います。
「勉強する時間も、休む時間も、自分で選べる」
司会者: 放射線科医は、仕事と生活のバランスを取りやすいのでしょうか。
専攻医Y: 比較的調整しやすい診療科だと思います。若いうちは画像診断の知識を身につけるための勉強が必要です。私自身、業務後に教科書を読んだり、その日に経験した症例を復習したりするために病院に残ることがあります。ただし、それは自分で選んで行っていることです。予定がある日は帰宅し、自分や家族との時間を過ごすこともできます。
司会者: 緊急対応はどのような体制ですか。
専攻医Y: オンコールは当番制で、上級医と若手医師が組んで対応します。緊急のIVRが必要になることはありますが、当番ではない日は予定を立てやすいです。休日には友人と出かけたり、自然の中にあるサウナへ行ったりしてリフレッシュしています。専門性を高めるための時間と、自分の生活の時間を調整しやすいことは、放射線科の働き方の魅力だと思います。
「読影力と、相談しやすさの両方を」
司会者: 放射線科へ進む前に、研修医のうちにやっておいた方がよいことはありますか。
研修医N: 研修医のうちに身につけておいた方がよいことがあれば教えてください。
専攻医Y: まずは、できる範囲で教科書を読むことだと思います。読影は、教科書を一度読めばできるようになるものではありません。知識を学び、実際の画像を見て、また教科書に戻る。その繰り返しで力が上がっていきます。私自身、研修医の頃にもっと読んでおけばよかったと思っています。まとまった教科書を一度通して読む経験は、その後の土台になります。
司会者: 知識以外に大切なことはありますか。
専攻医Y: 他科の先生から「この人なら相談できる」と思ってもらえる放射線科医になることです。放射線科医は、画像だけを見ているわけではありません。臨床医から患者さんの情報を聞き、画像所見を分かりやすく伝え、その後の診療につなげます。
研修医N先生はとても話しやすく、周囲が相談しやすい人柄です。その長所は、放射線科医として大きな武器になると思います。
「見学では、研修医が何を、どこまで経験しているのかを具体的に聞いてみてください」
司会者: 医学生が臨床研修病院を選ぶ際、どのような点を確認するとよいでしょうか。
専攻医Y: 適切な指導のもとで、さまざまな経験をさせてもらえる病院がよいと思います。研修医に大きな裁量があるだけでは、何をすれば良いか分からなくなることがあります。一方で、すべてが決められ見学だけになってしまうと、自分で考える機会が少なくなります。見学では、「研修医が何をどこまで担当するのか」「困ったときに誰が確認してくれるのか」を、実際に働く研修医に聞いてみるとよいと思います。
研修医N: 経験できる診療科の幅も大切です。進みたい診療科が決まっている人は、その科に強みがあり、早い段階から経験できる病院を選ぶのもよいと思います。一方で、まだ迷っている人は、内科や外科だけでなく放射線科などの専門科も選択できる病院がよいと思います。私は放射線科を実際に回ったことで、自分でも想定していなかった適性に気づきました。研修前には知らなかった自分の可能性を、研修中に見つけることもあります。
「研修医室と同期は、研修を続けるためのセーフティーネット」
司会者: 実際に研修を始めてから、病院選びのときには気がつかなかった魅力はありますか。
研修医N: 研修医室と職員食堂があることは、働き始めてから大切だと感じました。初期研修は2年間あります。医療を学ぶだけではなく、その病院で2年間生活するということでもあります。忙しい日や思うようにいかなかった日には、研修医室に戻って同期と話すだけでも気持ちが変わります。職員食堂で温かい食事を取れることも、毎日のことなので大きいです。
司会者: 同期の存在はいかがですか。
研修医N: 同期が12人いることは心強いです。さまざまな性格や考え方の人がいるので、誰かに相談したり、一緒に過ごしたりできます。人数がいることで、自分に合う関係を作りやすいことも魅力の一つだと思います。研修医室や同期の存在は、研修を続けていくためのセーフティーネットになっています。
専攻医Y: 医師として成長するためには、適切な負荷や実際の経験が必要です。一方で、研修を続けていくためには、安心して戻れる場所も必要だと思います。関東労災病院には、指導を受けながら挑戦できる環境と、同期と過ごせる環境の両方があります。
「進路が決まっていなくても、実際に経験することで見つかることがある」
司会者: 最後に、医学生へメッセージをお願いします。
専攻医Y: すでに進みたい診療科が決まっている人は、その科の指導医や症例が充実し、早い段階から専門分野に触れられる病院を選ぶとよいと思います。放射線科を考えている学生であれば、読影の指導を受けられるか、専門性を持つ先生がいるか、研修医でも実際に画像を読めるかを確認してください。ただし、志望科以外の研修も将来必ず役に立ちます。画像の向こう側にいる患者さんを理解するためにも、初期研修で各科の診療を経験することは大切です。
研修医N: 私は入職した時点では、放射線科へ進むとは考えていませんでした。さまざまな診療科をまわり、自分が得意なことや、どのような仕事に楽しさを感じるのかを知ったことで、放射線診断科に出会えました。診療科選びでは、周囲から聞いたイメージだけでなく、実際に自分がその科で働いたときにどう感じるかも大切にしてほしいと思います。関東労災病院には、幅広い診療科を経験できる環境と、進路について相談できる先生方がいます。進路が決まっている人は、それを深めることができます。まだ決まっていない人も、実際にまわってみることで、自分では考えていなかった診療科に出会うかもしれません。
医学生の皆さんも、ぜひ病院見学にお越しください。研修の雰囲気だけでなく、働いている研修医の言葉を直接聞き、自分がここで研修する姿を想像してみてください。
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