貧血について
『貧血』とは、体の中の酸素を運搬するヘモグロビンや赤血球の数が減って、必要な酸素を運べなくなった状態を指します。立ちくらみが生じたときに「貧血をおこした」ということもありますが、これは起立に伴い、重力の影響で脳内の血液が減ったためにおこるもので、本当の貧血とはいえません。
また、同様に顔色が悪い人に「貧血っぽいね」ということがありますが、この場合も、ただ単に顔に分布する血液が少ないためのものであれば、真の貧血とはいえません。貧血と診断するためには、血液検査を行い、赤血球やヘモグロビンが低下していることを確認することとなります。
貧血の原因も、酸素を運ぶヘモグロビンの原料となる鉄分が不足したために生じる鉄欠乏性貧血、せっかく作った赤血球が壊されてしまう溶血性貧血、出血に伴う失血性貧血、そしてまれには白血病などの病気が潜んでいることもあり、多岐にわたります。
しかし、一番多く認められるのは鉄欠乏性貧血で、これは特に乳児期と思春期に多くなっています。その理由は、乳児期は急速な成長に伴い十分な鉄分が必要になりますが、離乳開始に伴い鉄分が不足してしまうこと、また思春期では体格の急激な発達や月経の開始、無理なダイエットによる鉄分不足が原因となっています。
貧血になると、体の中の酸素が不足するため、疲れやすくなったり、すぐに動悸がしたり、そのままほっておくと発達が遅れたりすることもあります。
一番大切なのは、栄養バランスのとれた規則正しい食事です。時々、栄養があるとのことで、水がわりに多量の牛乳を飲んでいるお子さんをみることがありますが、実は、牛乳中に含まれている鉄分は0.1mg/dlと非常に少ないうえ、母乳や育児用ミルクに含まれる鉄分より吸収率が劣ります。そういう理由で、大量に飲みすぎると貧血を起こす可能性があります。なにもかも、ほどほどが大切です。
こちらの特集は神奈川新聞に掲載された『大丈夫ですか?心と体』を当院ホームページ用に再構成したものです。
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