関東労災病院 病院の話「青あざの治療 〜異所性蒙古斑・太田母斑〜」

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健康コラム

青あざの治療 〜異所性蒙古斑・太田母斑〜

青あざについて

関東労災病院 形成外科医師より

  • 異所性蒙古斑や太田母斑は、いわゆる「青あざ」と呼ばれます。青あざは皮膚の深いところ(真皮)に色素細胞(メラノサイト)が集まって出来るアザで、生まれつき又は生まれて間もなく出来るものや思春期以降の大人になってから出来るものがあります。
  • 生まれつきの青あざの代表が蒙古斑です。蒙古斑は生後1週から1ヶ月ころまでに、青いあざがお尻や腰にみられるもので、胎生期の真皮色素細胞(メラノサイト)の残存と考えられています。日本人のほぼ全員にみられ誰でも知っている「あざ」のひとつです。5,6歳までに自然に消失し問題にならないことが多いです。まれに通常の部位以外に蒙古斑がみられ、これを異所性蒙古斑といいます。
  • 思春期以降になってからできる青あざの代表が太田母斑です。太田母斑は目の周りや頬を中心とした片側顔面にできます。白眼の部分に青あざがあるのも特徴です。思春期以降の女性に多くみられますが、乳児期から濃くなっていくものや両側に出来るものもあります。また、肩の周りにできる同じ様な青あざは伊藤母斑と呼ばれます。

異所性蒙古斑について

 異所性蒙古斑は、お尻や腰にみられる蒙古斑同様に大半は6〜10歳までに消失することが多いです。自然消退する理由はよくわかっていませんが、赤ちゃんの皮膚は成長するにしたがい厚みが増すこと、また皮膚が引き伸ばされるために異所性蒙古斑が目立たなくなるのではと言われています。蒙古斑同様に必ずしも治療の必要はありませんが、4%程は異所性蒙古斑が学童期以降も残ります。異所性蒙古斑は、通常の蒙古斑より自然消退が遅く、多発性のもの、大きいもの(10cm2以上)、
濃いものは残りやすいです。異所性蒙古斑は日焼けすると濃く見えるので見た目を気にするようであれば、日焼けしないように気を付けた方が良いです。

 色の濃い異所性蒙古斑や衣服に隠れない露出部などは患者・家族の精神的苦痛を緩和するために治療の対象になることもあります。

太田母斑について

 太田母斑は女性に多く、額、眼の回りや白眼、頬、耳などにできる青あざです。通常、顔の片側にできます。稀に両側性にできることもあります。
太田母斑は出生時に存在することは稀で生後数日から数週間に出現する早発型と、思春期以降でホルモンバランスが大きく変化する時期(妊娠、出産、閉経後など)に色が濃くなったり、新たに色素斑が生じたりする遅発型があります。20~40歳台に発症することも稀ではありません。

 典型的な太田母斑は青紫色から灰紫青色で、そこに薄い褐色の小色素斑が混在します。褐色が目立つと茶アザやソバカス、シミと誤診されることもあります。従ってシミと思っていても淡褐色斑に青色ないし灰紫色が混じっていたり、点状の色素斑が混じていたりする場合は太田母斑の可能性があります。しばしば白眼のところに青色の色素斑が存在すると出生時に顔に色素斑が存在しなくても、ほとんどの症例が思春期までに顔に青あざを生じ、拡大します。
 太田母斑や肩にできる伊藤母斑のような後天性青あざは、自然に消退することはありません。

青あざのレーザー治療

  • 異所性蒙古斑は、多発性のもの、大きいもの(10cm2以上)、濃いものなど将来残る可能性がある場合と衣服に隠れない露出部などは患者・家族の精神的苦痛を緩和目的に治療を行います。効果の高い幼児期に早期治療を行います。照射回数は1〜3回程度で薄くなることが多く、年齢が高いほど回数が増えます。小学校に入ると遮光できないのでこの期間はレーザー治療を避けます。レーザー治療で完治を目指すと色素脱失します。ある程度目立たなくなれば自然消退するので薄くなったところでレーザー治療を終了します。
  • 太田母斑は、昔ドライアイス療法や植皮を行っていたことがありましたが、目立つ瘢痕形成(傷痕)や思春期以降に再発することが多いため、現在は合併症の少ないレーザー治療を行います。
    特にレーザーによる早期治療が有効です。ただし拡大傾向がある場合は治療回数が増えてしまうため、拡大が落ち着いてから照射を行います。照射後3か月間は遮光が必要です。また照射間隔は3か月で4〜5回ほどの照射が必要です。成人の場合は治療回数が増えることがあります。ゴールは目立たなくなった所でレーザー照射は終了となりますが、再発や遅発がみられたらレーザー照射を再度行います。
 青あざの治療はQスイッチレーザー照射を行います。現在臨床にはQスイッチアレキサンドライトレーザー、ルビーレーザー、ヤグレーザーが用いられ、レーザーの種類により多少の経過の違いや治療回数の違いが見られます。
 Qスイッチレーザー治療は、年齢が低いほど著効します。これは小さい時ほど皮膚が薄く、乳児だと日焼けもしていないため、低出力で皮膚の深い部分まで光線が到達します。照射時はマチ針で軽く突っつかれるような痛みを伴うため、外来でレーザー照射するときには照射前に1時間ほど麻酔クリームの外用や麻酔テープを貼付します。太田母斑で眼瞼に照射するときは局所麻酔を併用します。体重に対して麻酔薬の使用量は決まりますので1回の治療で照射できる面積に限界があります。レーザー光線は可視光線ですので、網膜を損傷しないように必ず眼を保護します。こどもの場合目隠しして抑制しますので、レーザー治療を開始する前から泣くことがあります。レーザー光線の大きさはφ3〜4mmですので、静止・抑制できないと上手に照射できません。面積が広い場合や抑制できない幼児、2歳以降はストレス・心理的トラウマを考慮して入院し全身麻酔で治療を行います。
 レーザー治療は健康保険が適応となりますが、同一部位の照射は3か月以上間隔をあけなければなりません。レーザー照射すると照射後炎症性の色素沈着を生じます。レーザー照射部位は照射前後に日焼けしないようしなければなりません。照射前に日焼けしているとレーザー光線が十分に届かなくなりますし、照射後の炎症性色素沈着が強くなります。レーザー照射後に日焼けすると炎症性色素沈着が更に濃く、遷延することがあります。
レーザー照射後は、軟膏を外用し皮膚が落ち着いたら、保湿剤を外用したり、紫外線予防でUVクリーム塗布やフィルム・テープを貼付したりします。
 レーザー照射し、色素が破壊され吸収されるまで3〜6か月かかります。治療効果は6か月まであるので、照射間隔は、3〜6か月程度で炎症性色素沈着が無いのを確認してから次の照射になります。異所性蒙古斑の場合、自然消退しますので無理せず間隔は長めになります。太田母斑は、日焼けを避けるために夏期はレーザー照射をひかえますが、照射回数が多いので色素沈着がなければなるべく3か月間隔で照射します。

レーザー治療の合併症

 合併症は、水疱形成、色素沈着、色素脱失、瘢痕、肥厚性瘢痕などがあります。 色素沈着が悪化したり遷延したりしないように、レーザー照射後は日焼けしないようにし、薄い痂皮を作ったときは無理に剥がさないようにします。水疱形成したときは、温存するようにし瘢痕形成や肥厚性瘢痕にならないように保護します。

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