膝前十字靱帯(ひざぜんじゅうじじんたい: ACL)とは膝関節の中にある靱帯で、運動するときなどに膝を安定させる役目をしています。
膝前十字靱帯損傷は、膝の外側からタックルされたとき、ステップを切ったとき、ジャンプして着地したときなどに膝がガクッと外れて起こることが多いです。
また、ケガした瞬間に「ゴリッ」や「ポキッ」などの音を伴うこともあります。
その後、数分間は痛みのため動けなくなり、時間とともに膝が腫れてきて膝の曲げ伸ばしができにくくなります。
通常、この症状は2~4週間ほどでで改善し、日常生活などは普通にできるようになります。
しかし、スポーツ復帰したときに、再度膝がガクッと外れるようになります。
膝前十字靱帯を損傷したままで運動や生活を続けていると、半月板や軟骨などの膝のクッションの役割をする組織が傷ついてきます。
膝前十字靱帯損傷からの時間が長ければ長いほど、膝が痛くなる、腫れる、引っかかるなどの症状が出やすくなります。
「膝がぐらぐらする」「膝に力が入らない」「膝が完全に伸びない、正座ができない」「スポーツ復帰して何度も膝を外してしまう」「膝が腫れて、熱をもつ」などが主な症状です。
当院では、通常の整形外科に加えて、スポーツ整形外科を充実させております。プロスポーツ選手からアマチュア選手、趣味でスポーツを行っている愛好家まで、膝前十字靱帯損傷の治療を専門的に実施しています。
(当院のスポーツ整形外科の詳細は「スポーツ整形外科ホームページ」をご覧ください。)
以下に診察から手術、リハビリテーションの流れを説明します。
スポーツ整形外科を専門にしている理学療法士がリハビリテーションを担当します。
当院で提供しているスポーツ・リハビリテーションの詳細は「スポーツ疾患のリハビリテーション」でもご紹介しています。
膝前十字靱帯損傷の後、時に膝の曲げ伸ばしの回復が遅れたり、ももの筋肉(大腿四頭筋)がやせて力が入りにくくなる場合があります。
このような状態が続いていると、正常に歩けず日常生活に支障をきたしてしまいます。
適切なリハビリテーションを行えば、通常2~4週ほどで日常生活はもちろん、ジョギングなどの軽い運動は出来るようになります。
手術前の状態が悪ければ、術後の回復も順調に進みません。
スポーツ整形外科の医師と理学療法士が評価をして、手術ができる状態まで回復したら、いよいよ手術を迎えます。
手術後は膝の可動域や筋力などの回復具合によって多少前後することはありますが、およそ以下のようなスケジュールとなります。
手術後翌日からリハビリテーション開始となります。
リハビリテーションは基本的に強い痛みや不安感のない範囲で進められ、けっして無理のないように行われます。
リハビリテーション室では膝の関節可動域エクササイズ、筋力エクササイズ、歩行練習を中心に行います(写真)。
リハビリテーション開始当初から痛みや不安定感のない範囲で体重をかけていき、通常1週前後で杖や装具がなくても安定した歩行が可能になります。
日常生活レベルの活動(通勤、通学、階段昇降など)は、およそ7~10日前後で可能となりますのでこの時期に退院となります。
4週前後で自転車エルゴメーター、8週前後でジョギングが可能になります。
競技の種類にもよりますが、筋力測定で合格すれば5ヶ月頃より非対人のスポーツ練習を開始し、6.5ヶ月頃より競技復帰という形になります。
以上、当院における膝前十字靱帯損傷の治療の流れを説明しました。
同じケガでも患者さんにより症状は様々で、膝を捻った後、膝前十字靱帯の損傷に気づかずに生活している人も多いようです。
個人で簡単に判断せず、専門の医療機関を受診することをおすすめします。
以下に患者さんから良く聞かれる質問を載せてみました。
ご参照下さい。
Q: | 他の病院で膝前十字靱帯が切れているかどうか内視鏡を入れてみないと分からないと言われたのですが、内視鏡検査をしないと靱帯が切れているか分からないものなのでしょうか? |
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A: | 当スポーツ整形外科の医師は膝前十字靱帯損傷の患者さんを専門的に治療し経験も豊富です。 ですから実際診察をしていて、膝前十字靱帯を損傷し、どのくらい機能的に働いているかは内視鏡検査をしなくても分かります。 すなわち当院スポーツ整形外科では、基本的には検査のためだけの内視鏡検査は行われていません。 |
Q: | 膝前十字靱帯再建術後の傷の跡はどれくらいの大きさなのですか? |
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A: |
当院の方法(半腱様筋)では、膝のお皿の下方の両脇に約1cm傷跡が2カ所、向こうずね(脛骨)に約3cmの傷跡が1カ所。
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Q: | 膝前十字靱帯の再建の手術をしなければどのようなデメリットがあるのですか? |
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A: | 膝前十字靱帯が切れたままでスポーツを続けていくと、その後繰り返し膝を捻ってしまうことが多いです。 この症状を膝崩れ現象といい、その都度、正常な他の組織、例えば半月板や関節軟骨などが損傷されていく場合があります。 この症状は筋力を回復させても改善されないことが多く、元のスポーツレベルへ復帰するためには手術を選択する選手が多いようです。 スポーツをしない日常生活だけ行えれば良いという人もなかにはいらっしゃるので、そのような人は必ずしも手術をしなければならないということはありません。 細かい点はスポーツ整形外科の医師と相談してください。 |
Q: | 年齢が高いと手術できないと言われました。何歳くらいまで手術は可能ですか? |
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A: | 基本的に患者さん本人のニードにあわせて手術は行われます。 最近では中高年の方でもテニスやバレーボール、サッカーなど趣味のレベルでスポーツを行っている方はたくさんいらっしゃいます。 当院スポーツ整形外科では、今後もスポーツを続けたいという意志と手術をしたいという希望がある方は、60代半ばの方まで手術の経験があり、現在のところ良好な成績を収めています。 ただし、年齢が高くなればなるほど関節や骨の状態が悪くなっている事が多いので、スポーツ整形外科の医師と細かく相談しながら手術をするか決定しています。 |
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