切断指再接着・手の外科センター

深澤 克康　亀倉 暁　増山 直子　菅原 留奈　小土井 佳美

切断指再接着 -指をつなぐ-

切断された指の血管を縫合して指を元につなげる手術を再接着といいます。
世界初の切断指再接着は、ほぼ半世紀前に日本で成功しましたが、労災外傷が減少した現代では切断指再接着の可能な病院は少なく、必ずしもご本人の希望が反映されない治療がされているのが現実です。手外科学会認定基幹研修施設の当院では、ご本人の希望に寄り添い、可能な限り難易度の高い再接着を行っております。

切断指再接着は、「スパっと切れてないから」とか「指先だから」できないということはありません。指尖部の切断でも再接着が可能です。

当院には多様な切断指再接着に対応できる、手を専門とする医師が5名おります。そして世界最高倍率の手術顕微鏡である三鷹光器MM51(最新型: 倍率50倍)を導入しているため、通常の手術用顕微鏡(倍率20倍)では対応が困難な、血管外径0.3mmまでの血管縫合が可能です。切断された指の再接着は、

• ご本人が希望している
• 全身状態・精神状態に問題がない
• 指尖部に動脈が残っている

のであれば手術可能です。

高齢者では全身疾患や指拘縮など色々考慮すべき課題がありますが、1週間の床上安静に耐えられる方であれば可能です。指先を丸める断端形成を希望される場合は、救急室で手術をして、当日の復職も可能です。

切断指の損傷がひどくて、再接着できない場合、あるいは丸められた指に対して、再建手術が可能です。

指再建の手術術式は、腰の骨を採取して足の親指を採取して包むように移植する『Wrap-around-flap (ラップ・アラウンド・フラップ)』、足指を犠牲にして移植する『Toe to finger transfer』があり、世界的な標準的手術とされています。しかしこれらは足の犠牲が大きく、最良とは言い難いため、私たちは「1/2母趾爪皮弁手術」という独特な手術を行っています。これは足の親指の半分のみの採取に留めるので、欠損が少なく機能障害の少ない再建法です。足の趾がなくなることはありません。術後、サンダルで街歩きができます。

くわしくは、こちらのリンク先の論文(英語)をご覧ください。(手術前後の写真が掲載されています。*血やキズが苦手な方は閲覧をお控えください。)

また骨髄炎などで腕や脚を切断すると言われた方も一度ご相談ください。血管柄付き骨移植により、四肢の温存が可能な場合があります。

また特発性大腿骨頭壊死症に対する人工股関節置換術は良好な治療成績であることは事実です。しかし摩耗による再置換の問題があり、若年者ではいまだ克服すべき課題となっています。我々は特化したマイクロサージャリー技術を駆使することで関節の温存手術を行っています。具体的には下腿の外側に存在する『腓骨』を栄養血管が付いた状態で採取して、大腿骨頭に挿入したのち微小血管を吻合することで『生きている骨』による骨頭の再血行改善を図り、同時に強度を高めます。人工関節置換術の回避を目的としますが、進行してもその手術時期を延長することにより、未来のよりよい手術恩恵を受けることができます。詳しくは、こちらのリンク先論文をご覧ください。

切断指などの救急外傷は深澤・亀倉・増山・菅原・小土井が救急室(オンコール)で対応しています。
それ以外の下記の診療実績のような手の疾患は、整形外科の外来で、月曜日は増山・菅原が、火曜日は亀倉・午後増山(再診外来)、水曜日は亀倉(第2火曜は輪番制)、木曜日は深澤・小土井、金曜日は深澤・菅原が担当しています。また、外来を受診される場合には、必ず紹介状をお持ちください。

手の外科の急患は随時お受けしていますが、応需不能な場合もありますので、搬送前にご連絡をお願いいたします。
また、患者搬送時は常温でも大丈夫ですので、切断指はガーゼに覆った状態で保存して下さい。氷が直接指に接していると、指が凍ってしまう場合があります。

診療ガイドライン(PDF)